花実みっけ

だいすきフェイジョア!

音もなく現れるそいつは、わたしに音を出すことを許さない

晩春か初夏のことです。木の枝が折れました。小人さんAが発見し、「どうにかしないと」と言っていたと聞いたので、待つつもりでした。よそ様に迷惑がかかる状態ではありませんでしたので、毛虫さんがいなくなる時期までそのままかなと思っていました。が、3日目には、敷地内ショートカットが使えないのが不便で、そこを横目に通るたびにイラッとしていることに気づきました。そこで、なにかとうるさい小人さんAの不在を狙って、ノコギリとハシゴを持ち出しました。小人さんAは、危険なことをしているまさにその時に、「気をつけろ」などと、背中側から声をかけてきます。足元注意の場所にいるわたしにですね、いいですか、背後から声掛けですよ。頼むから、黙って通り過ぎてくれ! というわけで、冒険は不在時に限るのです。

さて、くだんの折れた枝は、高さ2メートルほどの位置、周囲40cmくらいでしょうか。木の種類は、木の実ができる木。記憶が正しければ、あんずです。

折れて細くなってるところを切った作業自体は、15分くらいでしょうか。途中で、おがくずのシャワーを浴びたり、黒板に爪を立てた時のような音に悶えたり、隣の梅の木に大きめの蜂を見つけ、そろーっとハシゴから降りたり、ノコギリが切れない! とキウイ棚の下を歩き食用菊をまたいで別のを探しに行ったりもしました。

もうじき切り落とせるぞという段階で、ノコギリが頻繁に動かなくなっちゃったので、柿の木の下で草むしりをしていた小人さんBに「手伝って!」と声を掛けました。すると、小人さんBはハシゴに上りたがったのです。いや、ハシゴはわたしのだから(小人さんBが買いました) 。ノコギリもわたしのだから(小人さんBが買いました。手入れも小人さんBです)。あなたには木の枝を押さえててもらいたいだけだから。さっき蜂がいたのにも関わらず、ギャーギャー言いながら、結局、小人さんBが木にもハシゴにもノコギリにも触れる前に枝を切り落としました。呼んだ意味がない。

無事に枝は落とせましたが、重いのと枝分かれが多いのとツツジに覆いかぶさっているのとで、広い場所に移動させることができません。「動かない」「重い」「無理」「だめだ」と、ふたりとも早々に諦め、それぞれノコギリを持って、枝を落とすことにしました。ノコギリを安全に手渡し(このあと、向こうはわたしに刃を向けて渡そうとしてきたので、コイツゥ、と思った。ノコギリは、柄を相手に向けて渡しましょう)、植え込みのあっちからとこっちから、二人でギコギコ切りました。こちら側は3本で終了したので、ハシゴをたたんで片付けました。太いところに苦戦する小人さんBが「よく切れるノコギリ」を所望だったので、場所を聞き出し、ぶどう棚をくぐって取りに行き、柑橘類の横を通りミモザの下を歩き、松の横を抜け、何かの木の下を屈んで通り、手渡しました。

どうにかこうにか扱いやすいサイズにしたところで、小人さんBにお茶を出しました。その間に、わたしは枝を、ピンクの花が咲く梅の木の下に運びます。手押し車が2台とも「使用中」でしたので、5往復くらいしました。まったく、道具があれば半分で済んだのに。

わたしが切り落とした状態の枝が気に入らない小人さんBが、ビールケースを踏み台に、よく切れるノコギリでまた切り始めました。わたしが始めたことなので、なんとなく屋内に引っ込むのも悪い気がして、ノウゼンカズラの下やアジサイの足元にあるキクの摘心をしました。小人さんBがあんずの木の枝を、無事にきれいな断面にできたところで、終了です。時刻は15時30分を回ったころでした。ふさがっていた通路があいて、すっきりしました。陽も入るようになり、なんとなく明るくなりました。

 

いっぱい作業をしてわたしものどが渇いたので、お湯だしで麦茶を作りました。できあがったそれをマグになみなみ注いで、パソコンを起動し、ツイッターを見たり、ブログを読んだりしていました。と、首筋に、なにかひんやりしたものが。なんだ? と触ってみたところ、指にうごめく細長い感触が。絶対毛虫だ! その手を思いきり床に叩きつけるようにして払いました。ビダン! ほんとに音がした。ビダン! と。

床を見て、「ひっ」と思いました。思っただけで、声は出ませんでした。

あああ、やっぱり毛虫ぃぃぃ……でかいしぃぃぃ、5cmくらい? 以前、痛い目に遭っているので、頭の中を皮膚科情報が巡ります。巡る皮膚科情報を見ながら、紙に乗せて、毛虫には窓から外へお帰りいただきました。

そして手を洗い、色だけをヒントに検索。「毛虫 青 オレンジ」。

どうやら「オビカレハ」という、毒性のない毛虫のようでした。ほっ。

aikawa-park.hatenablog.com

今これを書いている段階で、あれから6時間は経過しています。首も指もなんともありません。よかったよかった。

やっぱりびっくりすると声は出ないものです。久しぶりに、「ロッカーを開けたらゴキブリが出てきて、びっくりしすぎて普通にそのまま用を済ませてロッカー閉めて立ち上がったら、教室の対角線上から悲鳴が聞こえてきた」のを思い出しました。事件は静かに起きて、よそで大事件になるのです。

 

f:id:haru_e-hana:20200626170439p:plain

運よく無害な毛虫でしたが、触れただけで痛くなる毛虫もいます。毛虫の発生時期に木の下を通る際は、頭上にお気を付けください。